【妖怪説明】
どどめき。鳥山石燕「今昔画図続百鬼」に描かれた妖怪。

【函関外史にいわく、「ある女生れて手長くして、つねに人の銭をぬすむ。忽腕に百鳥の目を生ず。是鳥目(※1)の精也。名づけて百々目鬼と云」。外史は函関以外(※2)の事をしるせる奇書也。一説にどどめきは東都の地名ともいふ】
と記されている。(※1:銭のこと ※2箱根から先)

手長は盗み癖のある人のこと。女掏摸氏は鳥目の精（銭の精）が腕について祟られた。
お金を「御足」とも呼ぶため、「足が付いて手に罹る」（犯罪の手がかりが見つかり嫌な目に合う）にひっかけた石燕の洒落だという。
また、そういう目に百回も遭っている、弱り目に祟り目ならば早くスリの「足を洗えばいい」ということだという。

雁の飛来にあわせて発症する湿疹を「雁瘡（がんがさ）」と呼ぶ。そして鳥目のことを「雁目銭(ががんぜに)」とも言う。つまり百々目鬼は雁瘡と推察される。石燕の絵は左腕をめくって雁瘡を見せているが、左利きのものは手先が巧みだともいう。

東都(江戸)の地名にあたる「どどめき」とは轟橋と早稲田の間の江戸牛込榎町にあったものではないかとされる。関東には轟・百目鬼・百目貴といった地名が各地にあるが、その由来は川の流れが騒々しいことや土手が崩れないようにした土留めに関係していたそうである。
また宇都宮市に百の目を持つ鬼、百目鬼の伝説があるので参照した可能性も指摘されている。
（妖怪211・百目鬼 参照）

「鳥目狙いて左腕が轟 瘡気が当たる女掏摸」

【参考文献】
『百鬼解読』多田克己・京極夏彦
『鳥山石燕 画図百鬼夜行全画集』
『妖怪事典』村上健司

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